【速報・深層】「弁解の余地はない。非常に申し訳ない」山上徹也被告、法廷での初謝罪が示す裁判の新たな局面

2022年7月に発生した安倍晋三元総理大臣銃撃殺害事件の裁判員裁判において、殺人罪などに問われている山上徹也被告(45)が、2025年12月4日の公判での被告人質問で、初めて遺族に対する謝罪の言葉を述べました。この謝罪は、これまで自身の動機や旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との因縁を語ってきた被告にとって、行為によって失われた一人の命とその遺族の苦痛に直接向き合った瞬間であり、今後の量刑判断に影響を与えうる重要な局面を迎えたことを示しています。

1. 法廷で初めて発せられた「謝罪」の言葉

山上被告が法廷で示した謝罪は、極めて重い意味を持っています。報道によると、被告は安倍元総理の妻である昭恵さんやご家族に対し、直接的な恨みはなかったことを明言した上で、**「非常に申し訳ないと思っています」**と述べました。

1-1. 「弁解の余地はない」という自己認識

弁護人からの問いに対し、被告は「(遺族に)3年半以上つらい思いをさせたのは間違いありません。私に**弁解の余地はない**と思っています」と発言。自身の行為の重大性と、それが遺族に与えた計り知れない苦痛を明確に認識している姿勢を示しました。これは、被告の兄も2015年に自殺で亡くなっているという自身の肉親を失った経験が、遺族の悲しみを理解する一因となっていることを示唆しています。

また、安倍元総理を殺害したこと自体についても**「間違いだった」**と述べ、計画の動機とは切り離した形で、行為そのものの過ちを認めました。

1-2. 動機と謝罪の分離

これまでの公判では、主に被告の生い立ち、母親の旧統一教会への多額の献金、それによる一家の崩壊、そして教団への強い恨みが犯行の動機として深く掘り下げられてきました。検察側は、安倍氏と教団との関係は希薄であり、被告は教団への批判を高めるために殺害を企てたという点で、犯行の計画性や悪質性を強く主張しています。今回の謝罪は、動機となった社会的な背景とは別に、**「人命を奪った」という行為そのものへの責任**を法廷で初めて表明したものです。

2. 事件後の社会の動きに対する被告の認識

山上被告の事件は、社会に大きな波紋を広げ、日本の宗教団体の寄付に関する法整備や「宗教2世問題」への注目度を一気に高めるきっかけとなりました。被告は、事件後の社会の動きについても法廷で言及しています。

2-1. 解散命令決定への言及

被告は、自身の事件がきっかけの一つとなり、東京地裁が旧統一教会に対し解散命令を決定したことなど、一連の社会的な動きについて、**「私としてはありがたい」**と述べました。さらに、これらの動きは「世の中にとって**あるべき姿だと思う**」と説明し、自身の事件が意図した「教団への批判と是正」という目的に一定の効果があったという認識を示しました。

しかし、検察官から「事件を起こして良かったか」と問われると、「一概には言えない」と回答しており、その心中には複雑な葛藤や、自らの行為がもたらした破壊的な結果に対する認識があることが窺えます。

3. 裁判の争点と今後の見通し

この裁判の主な争点は、罪を認めている殺人という行為に対する**情状面**、すなわち量刑をどう判断するかという点に集約されています。

3-1. 情状面で考慮される要素

  • 犯行の計画性・悪質性: 検察側が主張する、計画的なテロ行為としての側面。元総理大臣を白昼堂々、応援演説中に殺害したという社会的な影響の大きさ。
  • 生い立ちと動機: 弁護側が主張する、母親の多額献金による家庭崩壊と、長年にわたる教団への恨みという、被告の置かれた特殊な家庭環境(情状酌量の余地)。
  • 今回の謝罪: 被告の反省の念と遺族への配慮の程度。

今回の謝罪は、被告にとって情状面での有利な材料となりうる可能性があります。しかし、テロリズム的な側面や、民主主義の根幹を揺るがす行為であったという検察側の主張も重く、裁判員がこの謝罪をどのように受け止め、量刑に反映させるかが今後の最大の焦点となります。

3-2. 裁判のスケジュール

裁判は現在、被告人質問を含む公判期日が進行中です。11月20日から12月4日まで計5回の被告人質問が予定されており、12月18日に結審、そして判決は来年1月21日に言い渡される予定です。今回の謝罪は、裁判の最終盤における、極めて重要な証言となりました。

4. まとめ:初謝罪が意味するもの

山上徹也被告の法廷での初謝罪は、「動機」と「行為」の二重構造を持つこの事件において、被告が後者の「行為」に対する責任と反省を公に示した点で、大きな意味を持ちます。動機となった旧統一教会の問題は社会的に解決に向かいつつありますが、それとは別に、被告が犯した「一人の命を奪った」という罪に対する向き合い方が、今回の謝罪によって示されました。

弁解の余地はないとまで断じた被告の言葉を、裁判員がどのように評価し、最終的な量刑を導き出すのか、司法の判断が待たれます。

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